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¥4,400(税込)
ショップくうねあで生まれた作品たち、
それぞれのストーリー。
聞き手/株式会社くうねあ代表 堀江宗巨
お話をお聞きしたのは
有限会社一場木工所
代表
一場未帆さん
お話を聞きにお邪魔したのは
広島県北、三次市にある工房、一場木工所。
「kusunoki積み木セット」を製造してくれた会社です。
木工所の一角にある、事務所も工房も兼ねている
モダンなショールームでお話をお聞きしました。
「父から会社を引き継ぎ、地方で女性ゆえの苦労もありましたが
木に本気で向き合い勉強して技術士の資格をとりました。
それからウッドデザイン賞を連続受賞して、
それを主催する協会で
木を愛する本物の人たちとたくさん出会って
やっと見えてきた景色があるんです」
と代表の一場未帆さん。
見えた景色はとても視野の広い業界の今と未来だったようです。
「どんなに良い商品でも木材を移動させることが一番コストがかかるんですよ。
例えば鳥取で伐採した木材を北海道で製品化して東京に送ってる。
それで地元に利益は落ちてるか?って言えばそうでもない。
地方は疲弊するばかりなんです」
そこで一場さんが考えたのが『デザインのシェア』。
誰も言ってこなかった画期的なアイデアでした。
「ウッドデザイン賞も獲った“ひなたぼっこマルシェ”、
この作り方教えるから、地元の木材使って全国で作って売りましょ、って。
それぞれの地域の材で作って、それぞれの地域で提案できますよね。
日本のあちこちに技術のあるワークス(木工製作所)がたくさんあるんですから」
東京から全国に広げるのではなく、木材を移動せずに地域地域で展開する。
しかも自分のデザインを惜しみなく開放して。
「評価されたデザインをみんなで使う、
地域の材を使って地域で作って、
それを海外に出していくのが夢」
まわりからは、まるで公共事業やってるみたいと言われているのだそう。
難関国家資格の技術士を取得し各種委員や講師をつとめ、
行政や法人のプロジェクトをプロデュース、
しかもイラストレーターでもあり日本ウッドデザイン賞を連続受賞と、
とにかく忙しく動き回ってた一場さん。
私が積み木セットを作ってくれる木工所を探していて
一場さんと初めて出会ったのは
そんな超多忙の時でした。
ネットで探した岡山や高知の木工所が候補になってた時
たまたま近くを通ったときに気になった社屋を覚えていて
飛び込みでここのショールームを訪問したら
たまたまいらっしゃった。
「アポなしで出会ったときは、うちのスタッフからも奇跡だと言われました」
「何回来てもらっても会えない人はたくさんいますが、ご縁がある方は必ず会えます」
それで、話をしてみると
キッズ向け商品をたくさん開発している一場さんも
くすの木保育園のことはご存知だった。
それですぐに意気投合し
その場でいっぱいアイデアが出て完成したイメージがそこでまとまりました。
一場さんと話してると
地域の材をいとおしく大切に思っているのがひしひしと伝わってきます。
「どこの木材か?って聞かれて、○〇県産材っていうのが私は嫌いなんです」
どうしてかと聞くと
「山はつながってるし山に境はないから
勝手に線引きして、予算配分した人の権益の話でしょ。
そんなのどうでもいいんです」
とスッパリ断言。
「だから私は、『やまなみ材』『里山材』って言ってます」
話の途中、無造作に置かれた木片を適当に手にとり、
瞬時に樹木名と特徴をさらりと説明してくれます。
この技術士の知識と見識、
それと賞を獲るデザイン力に社長業の実績。
これらが今大変役立っているのだとか。
「女性だとか地方だとかで気後れしてたのが、
資格や経験で気にならなくなったんです」
「日本ウッドデザイン協会ができて、賞も獲って、
授賞式とか行くとそこは今まで会えなかった大手企業ばっかり。
木が大好きで本気でやってる人たちがいっぱいいて
その場で食事しながら話が出来るからすぐ意気投合しちゃう。
こんなこと考えてるんですとか、こんなこと出来ますよって言ったら、
えっ、できるんですか?ちょっと教えてくださいって。
木をこよなく愛する仲間と横のつながりで直接仕事ができるんです」
一つの商品が届くまでいろんな組織やたくさんの思惑が絡むから
木への情熱と情報が薄まり、うまく伝わり切れていない。
そういうことを痛感したのだとか。
林業の業界紙の記者が
「こんなにワークス持ってる人いない」と言うくらい
一場木工所の連携会社の数は多い。
それぞれの会社の得意分野を熟知し、
スケジュールの調整と配慮に
絶大の信頼を得ているからだとか。
「ちゃんと地域のものを作ってるってことじゃないと
一緒に仕事したくないので」
これも地域にこだをる理由の一つ。
「CO2とか環境負荷の低い木を扱うってなると
距離なんですよ」
最初に聞いたコスト高の原因の木材移動のマイナス面はここにもつながる。
環境についても一場さんが見ている景色は広くて遠い。
「SDGSとか環境に関しての目標は、
必ず木を入れていかないと達成できないんですよ。
カーボンニュートラルなんて遅いですよ
この10年はカーボンゼロとかカーボンマイナスにいかないといけない」
この環境に関しても、海外(欧米)が基準や仕組みを作って
イニシアティブをとるから、
日本のが良くても合わさざるえないのが現状だそう。
「だから認証マークがすごく重要。
海外の認証マークは付けてるだけでかっこいいから
靴の後ろに見えるようについてる
欧米ではちゃんとついてる商品を買いたいって意識が強いから
もうすごく売れてるらしいんです。
高くてもそれを持ってること自体がステータスになってる。
商品が持っているストーリーを買ってる人が多いですね」
一場木工所でも海外で通用する商品がある。
廃棄までCO2排出量考えて設計されたエコリーフ環境ラベルとカーボンフットプリントをとってる『ひなたぼっこドミノ』がそれで、おもちゃでは初めての認証になる。
「安くて大量じゃないと要らないっていう世界から
100個でもいいから、地元できちんとしたものを、顔がみえるものを売りたい。
本物でちゃんとしたものっていうのを大手企業もやり始めてるんです。
なぜか?
海外の志向がそうなってるから。
実際そうやってないと売れないんですよ」
「木の将来を考えると
子どもたちに木のことをもっと知ってもらいたい。
そのためにも
単なるおもちゃの一つじゃなくて
親に興味を起こさせて
日常でいつも木の香りや手触りがある環境にしたい。
それが原体験となって子どもが学生になる頃、仕事の選択肢になる。
そして彼らが自由に発想を広げ
新たな知見とデザインで海外まで事業を拡げる。
そうなれば木の未来は明るくないですか?
だから必要としてくれる人がいれば、
今の知見やデザインを惜しみなく提供しているんです」
一場さんが見る未来は常に明るい。
そんな考えや、今アクティブに活動できているのも
ある人との出会いと言葉があったからだとか。
「青森のBUNACO(ブナコ)っていう会社なんですが
地元のブナの木をなんとかしたいと
薄いリボンみたいにする技術を確立して
それでランプシェードを商品化し、ゴミ箱とかティッシュボックスとかも
ゴミ箱なんて2万円するんですけど
とにかく美しい。
全世界で年間4万個ぐらい売れるんですって。
ヨーロッパの有名な展示会や見本市とか、
大手企業も毎回申し込んで厳正な審査に阻まれるのに
ブナコは確定で最初から入ってる。
世界から来て欲しいって呼ばれている、そういう会社です」
「人の紹介で帰り際にちょっとだけその社長さんと話す機会があって
まだどこにも認められていないうちの商品のことを熱く語ったら
『本当に自分がいいものだと思っていいもの作ったんでしょ
だったらそれが言いっていう人のところまで行きなさい。
それは東京かもしれないし海外かもしれないでしょ。
そこまで行くんだよ』って言われて
『あーっ、そうします』ってなったのが今の始まりなんです」
出会ってすぐに意気投合してできたこの積み木にも
そうなって欲しいと一場さんは言います。
「地域のきちんとした顔が見えるもので作って
これがいいって言ってくれる人に出会い
日常で飾っていつも接してもらえる
そんな積み木になって欲しい」
そんな思いがこもった
素敵な積み木セットになりました。